第45代アメリカ合衆国大統領、ドナルド・トランプ。
政治的評価を巡っては常に賛否が分かれる人物ですが、政治という枠を外し、一人の人間として彼の人生を眺めてみると、そこには常識では測れない強烈な個性が浮かび上がってきます。
極端な自信、既存ルールへの無関心、そして舞台を支配するような振る舞い。
それらは突発的なものではなく、若い頃から一貫して見られる特徴でもあります。
本記事では、回顧録や関係者の証言として語られてきたエピソードをもとに、ドナルド・トランプという人物の「規格外さ」を象徴する出来事を紹介します。
11歳の少年を救った「自分の名前」という処方箋
2000年代初頭、ニューヨーク。
当時まだ11歳だった俳優 ダニエル・ラドクリフ は、映画 ハリー・ポッター の主演として、一躍世界的な注目を浴びていました。
生放送のトーク番組出演を控え、緊張のあまり楽屋の廊下で立ちすくんでいた少年に声をかけたのが、当時すでに不動産王として名を知られていたドナルド・トランプです。
ラドクリフが不安を打ち明けると、トランプは慰めるでもなく、こう助言したと伝えられています。
「もし言葉に詰まったら、カメラを見てこう言えばいい。
『さっきドナルド・トランプに会ったよ』とね。
それだけで、会場は君のものになる」
突拍子もない言葉ですが、ラドクリフ本人は「意味が分からなすぎて、逆に緊張が吹き飛んだ」と後に語っています。
自分の名前を“切り札”として提示する発想は、トランプの自己認識を象徴するものと言えるでしょう。
ゴルフにおいても現実を支配する男
ドナルド・トランプは熱心なゴルフ愛好家として知られ、世界各地に自らの名を冠したゴルフコースを所有しています。
しかし、彼とラウンドした人物たちの証言から浮かび上がるのは、一般的なゴルフ観とは少し異なる姿です。
複数のスポーツライターが記しているのは、「明らかに池やラフに消えたはずのボールが、いつの間にかフェアウェイに戻っている」という現象。
トランプ本人はそれを疑問に思う様子もなく、「素晴らしいショットだった」と満足げに語るのだそうです。
彼にとってゴルフは、厳密なスコアを競う競技ではなく、「自分の空間で、勝者として振る舞う体験」に近いものだったのかもしれません。
ルールよりも、その場の支配力を重視する姿勢は、彼の人生全体にも共通しています。
ホワイトハウスに並んだ1,000個のハンバーガー
2019年、ホワイトハウスで行われたある晩餐会は、世界中の注目を集めました。
全米大学選手権を制したアメリカンフットボールの学生チームを招いたその席で、用意されたのは高級料理ではありません。
マクドナルド、バーガーキング、ウェンディーズ。
いわゆるファストフードチェーンのハンバーガーやナゲット、ポテトが、1,000個以上並べられたのです。
政府機関閉鎖により専属シェフが不在だったことが背景にありましたが、トランプはこの選択を誇らしげに語りました。
「これはアメリカの偉大な食べ物だ」
金色の調度品に囲まれた部屋で、紙包みのバーガーを前にする大統領の姿は、格式と庶民性が奇妙に同居した象徴的な光景でした。
酒もタバコも断ち続けた理由
派手な生活を送ってきたイメージとは裏腹に、トランプは生涯にわたりアルコールもタバコも口にしていません。
その背景には、家族との深い関係があります。
兄フレディ・トランプは、アルコール依存症に苦しみ、43歳という若さで亡くなりました。
その最期に近い時期、兄は弟ドナルドに「絶対に酒を飲むな」と言い残したとされています。
トランプはその言葉を守り続けました。
大統領執務室にはダイエット・コークを呼ぶための専用ボタンがあったと言われていますが、そこには単なる嗜好以上の意味があったのでしょう。
奔放に見える振る舞いの裏側で、彼は極めて頑固な自己規律を貫いていました。
おわりに|「自分を信じ切る」という生き方
自分の名前を切り札にする発想。
現実を自分に都合よく再定義する姿勢。
格式よりも「自分が好きなもの」を選ぶ判断。
そして、兄との約束を何十年も守り続ける頑固さ。
ドナルド・トランプという人物は、矛盾した要素を同時に抱えながら、それらを一つの個性として成立させてきました。
良し悪しの評価は分かれるとしても、「自分を信じ切る」という点において、彼ほど一貫した人物は稀かもしれません。
彼の逸話は、現代における「個性」や「自己肯定感」の在り方を考える一つの材料を与えてくれます。